橋を渡らぬ渡し守

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むかしむかし、
川向こうの村へ急ぐ若者がおりました。

けれど橋は古く、
板はところどころ白くささくれ、
渡るたびに綱が低く鳴りました。
岸では、渡る者がみな一度だけ
川をのぞいてから足を出すのでした。

そこへ黒い羽織の商人が現れ、
にこにこと申しました。
「急がば回れ。
昔の人は、よいことを残します」

商人は若者に、
山裾をぐるりと回る道の地図を売りました。
若者は銭を払い、
橋を見ぬまま紙を懐へ入れました。

山道は長く、
ぬかるみに草履が沈みました。
袖で汗をぬぐうたび、
懐の紙だけが乾いたままでした。

日が落ちるころ、
ようやく向こう村へ着くと、
祝言はもう終わっておりました。
門口には、
花嫁が別の男と並んで立っておりました。

若者が立ち尽くしていると、
少し遅れて来た商人が、
橋のある方を見て笑いました。
ファンタジー
公開:26/04/10 12:00
更新:26/04/10 08:53

問い屋

問いを描くショートショートを書いています。
 
その違和感を、
まだ持ったままの人へ。
 
問いの続きを、ここにまとめています。

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