季節売り

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「季節はいかがですかー」

ある村に、季節売りの行商人がやってきた。

行商人は一つの瓶を取り出すと、それを開けた。
桜の香りが辺りに広がり、遠くでは小鳥がさえずり、爽やかな風が吹いた。

「これは春です」

別の瓶を開けると、じりじりとした陽が差し込み、蝉の声が響いた。
さらに別の瓶からは、澄んだ風が吹き、紅葉が舞った。
最後の瓶からは、吐く息が白くなるほどの冷気があふれ、雪が舞った。

村人は驚き、競うように季節を買い始めた。
気に入った季節を、好きなだけ手に入れようとした。
季節が売れると、行商人は村から去っていった。

一年後。村は以前と変わっていた。
花は咲かず、実りは訪れない。

そこに、あの行商人が再びやってきた。
村人は行商人の元に集まった。

「春と秋を売ってくれ」

行商人は肩をすくめた。

「春と秋は売り切れました。今は、夏と冬しか残ってないんですよ」
ファンタジー
公開:26/04/09 15:34
更新:26/04/09 18:37

加賀美 秋彦

加賀美 秋彦と申します。
2025年4月から、ショートショートを書き始めました。
色々なジャンルの作品を書いています。
よろしくお願いします。

作品イラストはフリー素材やAIで作成したものです。

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