有明の花

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魔法使いが育てた木には、一度も花の咲いたことがありません。
魔法使いは木を連れて、お天道さまと月神さまに会いに行きました。
「この木は魔法が宿る木です。貴き光で尊き花をつけるでしょう。日の光と月の光、どちらで花は開くでしょう?」
昼の間お天道さまは、目一杯の陽光で、木を明るく包みました。けれども花は目覚めません。
夜の間月神さまも、あらん限りの月影で、木を眩く照らしました。けれども花は目覚めません。
困った魔法使いは、天が薄ら白く染まる頃、同じ空に日と月とを並べてみました。
すると不思議なことに。
二筋の光を一度に浴びた木の枝には、初めて花が咲いたのです。
それは水晶に虹が溶け込んだかの様な、全ての色が輝く透明。これ程鮮やかな花は、神さまさえも見たことがありません。
それからというもの。お天道さまと月神さまは、度々共に空に座して、有明の花を咲かせては、魔法使いと宴を楽しんだということです。
ファンタジー
公開:26/04/09 00:29

鹿野 秋乃

毒にも薬にもならないお話ばかりです。

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