第6話 継承欄

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魔王は、
言葉をほとんど持たなかった。

黒い玉座の前で、
若者は剣を振り下ろす。
相手が崩れる直前、
外套の奥で揺れた首札だけが見えた。
そこにも名はない。

勝った、と若者は思う。
これで終わるはずだった。

だが玉座の裏には
封書が一通だけ残っていた。
王都の赤印。
旧名保管庫と同じ封緘。

若者はそれを開く。
封紙は軽く、
返還証が入るには
薄すぎる重さだった。
親指が紙の縁をこすり、
乾いた感触だけが残る。

中にあったのは返還証ではない。
薄い一枚紙。
最下段にだけ
新しい欄が増えている。

継承欄。

従行補助員が、
その紙を見て
初めて目を伏せた。
「……到達確認です」

裏面の細い事務字。

――討伐完了を確認。
――次期欠落選定権を、現到達者へ継承する。
ファンタジー
公開:26/04/15 20:00
更新:26/04/05 21:55
#名奪い連作

問い屋

問いを描くショートショートを書いています。
 
その違和感を、
まだ持ったままの人へ。
 
問いの続きを、ここにまとめています。

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