第3話 従行補助員

0
1

出立前、
若者には従行補助員が付けられた。

灰色の外套。
呼ばれるまで口を開かない。

「おれのこと、何て呼ぶ」
若者が木札を見せる。
補助員は一度だけ目を落とした。
「札面の名で、お呼びします」

「おまえの名は」
そう聞くと、
補助員は静かに答えた。
「従行補助員に、
 個別名は不要です」

門前で別の冒険者が言う。
「当たりだな。
 余計なことを言わない」

若者は顔をしかめたが、
補助員は返事の代わりに
荷紐のねじれを直した。
乾いた麻が、
指の下で小さく鳴った。

旅券の控えには、
最初から追記欄がある。

――補助員については、
――原名照会の対象外とする。
ファンタジー
公開:26/04/09 20:00
更新:26/04/05 21:19
#名奪い連作

問い屋

問いを描くショートショートを書いています。
 
その違和感を、
まだ持ったままの人へ。
 
問いの続きを、ここにまとめています。

コメントはありません

コメント投稿フォーム

違反報告連絡フォーム


お名前

違反の内容