第1話 名奪いの勇者札

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王都では、
魔王に名を奪われた者だけが
討伐隊へ加われる。

名を失った者は、
魔王城の結界に
拒まれないからだ。

若者が、
勇者登録所で札を握っていた。

「村では何て呼ばれてた」
受付に問われ、
若者は口を開き、
そのまま閉じた。
喉だけが一度、
乾いて鳴った。
指先だけが、
札の縁を強く押した。
「……思い出せません」

後ろの冒険者が鼻で笑う。
「それでも適格が付くのか」

老書記官は帳面を閉じる。
乾いた紙の音がした。
「魔王に取られたなら、
 もう半分は届いている」

渡された札の表には
討伐許可。
裏には細い字。

――原名欠損者を、
――対魔王先行隊へ充当する。
ファンタジー
公開:26/04/05 20:00
更新:26/04/05 20:58
#名奪い連作

問い屋

問いを描くショートショートを書いています。
 
その違和感を、
まだ持ったままの人へ。
 
問いの続きを、ここにまとめています。

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