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卒業する先輩は、
送別会の前まで
「泣くわけない」と笑っていた。
みんなも、
たぶんそう思っていた。
黒板の横に立った先輩は、
ありがとう、
楽しかった、と
いつもの調子で言った。
後ろの窓は少し開いていて、
夕方の風が、
色紙の角を鳴らしていた。
誰かのすすり笑いに、
つられて笑う余裕も、
まだ少しだけあった。
でも
「また、どこかで」
の一言だけ、
うまく続かなかった。
笑おうとして、
先に息が揺れた。
マイクを持つ指にだけ、
少し力が入った。
言い直すほどでもない沈黙が、
教室のまんなかに落ちた。
窓の外では、
いつものグラウンドの声がしていた。
ボールを呼ぶ声、
笛の短い音、
走る足音。
そのどれもが、
明日も同じように続くらしかった。
先輩は一度だけ顔を伏せ、
紙の端を折った。
拍手は、そのあとで
少し遅れて始まった。
誰も、すぐには
手を鳴らさなかった。
ほんの少し。
送別会の前まで
「泣くわけない」と笑っていた。
みんなも、
たぶんそう思っていた。
黒板の横に立った先輩は、
ありがとう、
楽しかった、と
いつもの調子で言った。
後ろの窓は少し開いていて、
夕方の風が、
色紙の角を鳴らしていた。
誰かのすすり笑いに、
つられて笑う余裕も、
まだ少しだけあった。
でも
「また、どこかで」
の一言だけ、
うまく続かなかった。
笑おうとして、
先に息が揺れた。
マイクを持つ指にだけ、
少し力が入った。
言い直すほどでもない沈黙が、
教室のまんなかに落ちた。
窓の外では、
いつものグラウンドの声がしていた。
ボールを呼ぶ声、
笛の短い音、
走る足音。
そのどれもが、
明日も同じように続くらしかった。
先輩は一度だけ顔を伏せ、
紙の端を折った。
拍手は、そのあとで
少し遅れて始まった。
誰も、すぐには
手を鳴らさなかった。
ほんの少し。
青春
公開:26/03/28 07:00
更新:26/03/28 05:13
更新:26/03/28 05:13
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