東京ららばい
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朝、目が覚めた。ホテルのベッドだった。白い夢を見ていた。隣で男が寝ていた。知らない男だ。私はベッドから抜け出した。大きな鏡が目に入った。寝癖を手で撫でながら鏡の前に立った。そこに映っていたのは私ではなかった。一丁の巨大な絹ごし豆腐だった。白く四角く艶やかな絹ごし豆腐だった。私が首をかしげると鏡の中の豆腐がかすかに揺れた。その時ふいに背後に気配を感じた。振り返るとさっき隣で寝ていた男が立っていた。やはり知らない男だ。男は優しいほほ笑みとともに私を抱きしめた。私は男の胸に顔をうずめた。すると男がキスを求めてきた。私はそれを断って鏡を見た。男は私を背後から抱きしめていた。鏡の中の絹ごし豆腐にかつお節がかかっていた。
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公開:26/03/23 19:58
短い読み物を書いています。その他の短編→ https://tomokotomariko.hatenablog.com/
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六井象