春の夢に溶解す

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微熱が出た夜。深夜に目が覚める。窓を開けると生温かく湿った空気が流れ込んでくる。埃っぽい雨の匂い。その奥に微かに甘い香りを感じた。その香りに誘われるようにふらり鍵を取り、サンダルに足を差し込んで、外へ。
雨雲が昼間の熱を閉じ込めた空気はどこか気怠げだ。雨上がりのやけに浮いた白線と沈み込むアスファルトの上に街灯の光がテラテラと揺らぐ。誰もいない横断歩道はどこまでも行けと世界を緑に染める。そうして流れ着いた団地の隅。電話ボックスの灯りに照らされた香りの主を見つけた。雨にうたれ、花弁を散らせども香り立つ梅。
その紅色がかった花弁が1枚、はらり唇に触れた。舐めとると甘く溶けふわり香る。花の香りと数多の花弁が頬を覆い、花を一つ差し出し幻想へと誘う。口にすれば世界は蕩ける。春の気怠さと湿った空気は火照った身体と親和し、混ざりあいてひとつになる。香りと甘さに堕ちていく中、遠くで電話が鳴っている気がした。
ファンタジー
公開:26/03/22 23:35

あいはみと

最近始めました。
まだ勝手がわからないので探り探り。
短い話の掛け合いで関わり合う物語が出来たら面白いかなと試行錯誤中。

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