銀の鱗

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 僕らが着る通勤用スマートスーツは、満員電車での摩擦を減らすため、表面に微細な銀色の鱗を展開する。
 人にぶつかるとヌルリと滑る仕様になっているのだ。

 国が配布した『ライフ・マイニング』アプリは、移動距離を電子マネーに変換する。止まれば残高が減り、やがて社会からログアウトされる。

 すれ違う対向電車。窓越しに一人の男と目が合った。
 男は狂ったように窓を叩き、「ここから出ろ!」と叫んでいた。
 その男の顔は、僕によく似ていた。

 品川駅で吐き出されるように電車を降り、また別のホームへ向かう。
『本日の移動ノルマ残り○○キロ』

 ワイヤレスイヤホンから無機質な声がする。
 電車のドアが開く。銀色の鱗の群れの中に僕は滑り込む。

 いつからか僕らは、泳ぎ続けないと死ぬ回遊魚になっていた。
公開:26/03/18 21:02
更新:26/03/18 21:03

枯木咲

物語を考えることが好きです。日々の疲れを妄想で癒す日々です。

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