この街の掟

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法律がなく「お気持ち」が標識になる街。家の前を「時速三キロで」と願えばそれがルールになり、守らぬ車のタイヤは切り裂かれる。そんな過激な自由を求め、はみ出し者が集う場所だった。

だが、SNSで噂が広まり「普通の感覚」の移住者が増え始める。密造酒で稼ぎ、貴族の娘・志乃と駆け落ちしてきた伊藤ライもその一人だ。彼は守るもののない自由に不安を抱き、住民に訴えた。「街を正すべきだ」と。

かつてなら無視された言葉。だが今は法律を知る移住者が多い。賛同は広がり、お気持ちは「法」に変わった。結果、ライは一人になった。

自由ゆえに輝けた人々は光を失い、街には外と同じ「窮屈な平穏」が訪れた。職も志乃も失った彼は、自分の手で居場所を壊したのだ。

「白黒つければ、何も起きなくなる世界もあるんだ」
僕は少女に告げ、まだ自由が残る地下へ向かう。

(手記)
「黙って、この街を去ればよかった」
SF
公開:26/03/20 20:17

松下一成( 長野県 )

1989年長野県工業高校・工業大学で電気電子工学を学び設備系の会社へ就職。2019年諸事情により退職しました。以後物語を書いています。物語を通じて「自分」を振り返り見つめなおすこと。それは「答えは常に自分の足元にある」ということでもあります。「こんなのあったらおもしろそうだな」って世界を描きたいです。  【X】https://x.com/kazunari_UN【Instagram】https://www.instagram.com/kazunari.matsushita/【note】https://note.com/matsu_ine_zu

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