代読士

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世の中には、
自分の代わりに
言葉を読んでくれる
「代読士」がいるらしい。

黒い背広の案内人は、
責任ある発言が怖くなった人間を、
細い廊下の奥へ連れていく。

部屋には台本が一枚。
読むだけでいい。
確認しなくてもいい。
問題が起きたら、
「当日渡された」
「自分は関係ない」
と続ければいい。

名刺の裏には、
小さくこう書かれていた。

※発話後に生じた意味について、
当店は責任を負いません。

ある男は、
誰の言葉でもない声でそれを読んだ。

数日後、
たしかに仕事は減らなかった。
拍手も、少し残った。

ただそれ以来、
彼が何を言っても、
聞く人は内容より先に、
紙のめくれる音を探すようになった。
ホラー
公開:26/03/19 21:00
更新:26/03/16 20:34

問い屋

問いを描くショートショートを書いています。
 
その違和感を、
まだ持ったままの人へ。
 
問いの続きを、ここにまとめています。

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