レンギョ

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お隣の魚屋さんは、レンギョを飼っている。店頭に置かれた大きな水槽のなかで、赤と白の小さな体を煙のようにくゆらせ、訪れたお客さんを和ませている。
ところがある日を境にその姿を見かけなくなった。魚屋のおじさんにきくと、意外な答えが返ってきた。
「あの娘には惚れっぽいところがあるんだよ。男前に目がない。今回はどうも家出してしまったようなんだ」
そう言えばレンギョは漢字で恋魚と書くのだ。きっとおじさんの予想通りなんだろう。
もし見かけることがあったら家に帰ってくるよう伝えてほしい、と頼まれて、映画館へ向かう。
すると彼女がいた。映画館の窓口、狭い金魚鉢のなかに。
「大人一枚お願いします」
チケットは、町一番のハンサムなスタッフから手渡された。
わたしはうっとりしているレンギョに心のなかで、「わたしたち、ライバルね」と呼びかけて、劇場に入った。
その他
公開:26/03/16 09:07

いちいおと

☆やコメントありがとうございます✨

作品のイラストはibisPaintやAIで作成しています。

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