スローライフ

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 休日の昼下がりの公園を歩いていた。大きな池があり、その周りにベンチが設置されている。そのベンチの一つに、老夫婦が腰かけていた。老夫婦は池を見ていた。池は日の光を浴びて、風に揺られ、きらきらと輝いていた。老夫婦の夫は、それを見つめながら、スケッチブックに、鉛筆で絵を描いていた。その絵は、目の前の池の風景ではなく、涸れた池と焼け野原になった公園の風景だった。木は灰になり、地面には穴が開き、涸れた池の底には死体がいくつも倒れていた。彼には何が見えているのだろう。老夫婦の妻は、夫が一枚その絵を描き終えるたびに、スケッチブックからそれをちぎり取り、膝の上に置いた手動のシュレッダーにそれを突っ込んでいた。出来たばかりの焦土の絵が切り刻まれていく。その音は公園の様々な音に自然に調和していた。老夫婦は笑っていた。それを見て俺は微笑んで公園を去った。
ホラー
公開:26/03/15 18:07

六井象

短い読み物を書いています。その他の短編→ https://tomokotomariko.hatenablog.com/

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