心鏡鑑定所

0
1

王都では、冒険者登録の前に
一度だけ「心鏡鑑定」を受ける。

銀の鏡台に顔を映し、
曇りがなければ適職が出る。
剣士、治癒師、地図士。

だが曇りの強い者には、
職名より先に
磨くべきものが示される。

見栄。
言い訳。
他人への期待。
執着。

列で軽口を叩いていた青年は、
鏡台の前でだけ
縁から指を離せなかった。

鏡には青年の顔が出なかった。
代わりに、後ろの列の目だけが
浅くいくつも映っていた。

拭布は濡れるのに、
鏡面は少しも乾かなかった。

やがて細い文字が浮かぶ。

――清拭継続中。
――他者視線の反射過多により、
 本日の配属を保留する。

青年の登録札の上へ、
次の受検者名が静かに重ねられた。
その他
公開:26/04/03 20:00
更新:26/04/02 05:16

問い屋

問いを描くショートショートを書いています。
 
その違和感を、
まだ持ったままの人へ。
 
問いの続きを、ここにまとめています。

コメントはありません

コメント投稿フォーム

違反報告連絡フォーム


お名前

違反の内容