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 雨の夜だった。会社からの帰り道、歩道橋を歩いていた。前方に人影が見えた。その人は傘もささずに、歩道橋の下を流れる車列を見ていた。俺は近づいていった。気になったからだ。案の定、その人は、水に溶ける性質の人だった。しかも若い女性だ。強くなる雨の夜に、傘をさしていない。事実、彼女の体は雨水に溶け始めていた。「これ」俺は彼女の傍に立ち、傘を差し出した。「どうぞ」彼女はぼんやりした目で俺を見つめ、傘を受け取った。俺は走って家に帰った。翌朝、目覚めると雨は止んでいた。俺は晴れた空の下を歩いていた。歩道橋の近くに来た。歩道橋のすぐ傍に児童公園がある。俺は何気なくそちらに目をやった。公園の小さな水道の足元に何か置かれている。それは花束やジュースやお菓子だった。この水道の水で誰か死んだらしい。俺は昨夜の女性を思い出した。まさかな。俺はとりあえず手を合わせようとした。その時、背後に気配を感じた。
ファンタジー
公開:26/03/13 19:01

六井象

短い読み物を書いています。その他の短編→ https://tomokotomariko.hatenablog.com/

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