生きた証

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 真夜中の工事現場である。一軒の家が解体されている現場である。人は誰もいない。重機がひっそりと佇んでいる。その中に、一台のショベルカーがある。ショベルカーは老いている。ふいにぎいぎいと音を立てて、ひとりでに動き出す。ショベルカーは、ショベルの先端で、地面の土に何かを書き始める。それは詩である。いくつかの詩である。土についての詩、鉄骨についての詩、腐った柱についての詩。ショベルカーは書き続ける。他の重機たちはそれを冷ややかな目で見ている。朝になれば作業員たちが着て、地面を慌ただしく歩き回って、詩は消えてしまうだろう。
ファンタジー
公開:26/03/06 17:33

六井象

短い読み物を書いています。その他の短編→ https://tomokotomariko.hatenablog.com/

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