奈良の鹿

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春の朝、霧のかかる 奈良公園 を歩いていた青年は、一頭の鹿に出会った。
鹿はじっと彼を見つめ、まるで導くように歩き出す。
不思議に思いながら後を追うと、鹿は林の奥の小さな祠の前で立ち止まった。
そのとき青年の心に、どこからか声が響いた。迷うとき、人は遠くに答えを探す。
でも本当の道は、自分の中にある。
はっとして顔を上げると、鹿の姿はもうなかった。ただ祠の前には一本の古い鹿の角が落ちている。
青年がそれを拾うと、朝日が差し込み、遠くで鹿の鳴き声が聞こえた。
公園に戻ると、鹿たちはいつものように観光客からせんべいをもらっている。だが青年は思った。

奈良の鹿はただの動物ではなく、昔から言い伝えられるように、春日大社 の神の使いなのかもしれない、と。
ファンタジー
公開:26/03/08 08:53

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