浅い眠り

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 冬の深夜、眠れなくて、そっと家を出て、近所を散歩していた。ふと入った裏路地で、ジュースの自販機を見つけた。缶コーヒーでも飲もうと近づくと、違和感を覚えた。自販機下部の商品取出口から、白い湯気が出ている。そっと蓋をめくると、取出口に、おじさんがぎちぎちに詰まっていた。白い湯気は、おじさんが吐いている息だった。おじさんと目が合った。「何を買うんだい」おじさんが言った。俺は「コーヒーです」と答えた。「眠れなくなるよ」「そうですね」「眠りなさい。僕も眠るから」おじさんはそう言って微笑み、目を閉じた。俺は何も買わずにボロアパートに帰り、布団に潜った。そして、体を出来るだけ小さく折り曲げ、ゆっくり目を閉じた。
ホラー
公開:26/03/02 11:11

六井象

短い読み物を書いています。その他の短編→ https://tomokotomariko.hatenablog.com/

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