たいへん美味しゅうございました

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あれは、何年前のことだったでしょうか。
暦とは裏腹に、季節はずれの高温でした。
本来であれば、そこにあたり前にあるはずの雪はどこにもなくて。
アスファルトがひどく無機質に見え、風情のない北の街に、妙にさびしさを感じたものでした。

あまり期待をせず、ふらりと入った路地裏のお寿司屋さん。
たいへん美味しゅうございました。

特に、あの穴子。
見るからにふっくらとしていて、
「その柔らかいの、もうひとつ、よろしい?」
なんて、夢中で言ったのでした。

いまでも不意に思い出します。
いい思い出です。

確か、あの次の日、もう一度、行ってみたのでした。

ですが、あの路地裏を探しあてることはできなくて…

あの路地裏、ほんとうにあったのでしょうか?

あのお寿司屋さん、ほんとうにあったのでしょうか?

それでも、あれは―

いい思い出です。










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その他
公開:26/02/25 02:59

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