拾う、紡ぐ

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手の平に乗せた四枚の言葉の透明感に旅人は目を細めた。
風光明媚な場所へ赴き、壊れない様に一枚一枚拾い集めた言葉たち。

「綺麗」「眩しい」「素敵」「大好き」

美しい景色に感動して、誰かの口からふいに零れた言葉だ。

旅人は「綺麗」を指先でそっと摘むと、月に翳してみた。透き通った「綺麗」が蛍の様に淡く光る。その輝きの中心を見つめると、旅人の心に桜が舞った。この「綺麗」は、春に積もった花弁の上へふわりと零れたのだろう。

飾り気が無く、誰の顔色を伺うでもない純粋な言葉たちを旅人は愛し、それらで何かを紡ぐ事も好んだ。
足元から針の様な霜柱を一本引き抜き、器用に針穴を空けて細い月光を糸にして通す。そして、四つの言葉を優しく縫い合わせたらオーロラの輝きを放つ四つ葉のクローバーの完成だ。

クローバーを足元に植えて、また旅に出る。

夜明けを前に俯き歩く、そんな誰かにしかこの四つ葉は見つけられない。
公開:26/02/24 21:07

ネモフィラの旅人( 風の向くまま )

旅人なのでいたりいなかったりします

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