住み分ける幽霊

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田中さんが夜道を歩いていると、目の前に青白い顔をした男の人が立っていました。
よく見ると足がありません。小さな声で「うらめしい」とつぶやきます。
田中さんは驚き、尻もちをついて、腰を抜かしました。
その男は消える...かと思えば、まだそこに立っています。

「早く消えろ」と彼が言うと、男は首をふります。
「消えるのは無理ですよ」
「だって幽霊だろ」
「用は済んだから、今帰りますよ」と男の幽霊は言いました。

「用?」
「人が驚く気持ちが、私らの栄養分なんです」
「帰るって、どこに帰るんだ」
「山の奥です。ふだんは、人と住み分けているだけです」
「そうなの?」
「ええ。クマと同じです。最近はエサが少ないので、こうして町に来ています」

「エサ?」
「近頃の人は、なかなか驚いてくれなくて。栄養不足なんです」
男の幽霊はそういうと、「じゃ」と頭を下げて、
足がないまま、歩いて帰っていきました。
ファンタジー
公開:26/02/23 21:04
幽霊 住み分け 栄養 クマ

tamaonion( 千葉 )

雑貨関連の仕事をしています。こだわりの生活雑貨、インテリア小物やおもしろステーショナリー、和めるガラクタなどが好きです。

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