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「遅い。遅すぎる」

私はあの男を待っていた。
約束の時刻は、とうに過ぎていた。
寄せては返す波を眺めながら、何度目かのため息をついた。
それは、遅れに対する怒りや落胆から生じたものではない。
『待つ』という行為によって、私の中であの男との約束の重みが増していた。

私はきっと、あの男と対峙するためにこの道を選んだのだ。
今日が、私の道の集大成なのだ。

遠くから小舟が近づいてきた。
ついに、あの男が現れた。
小舟が浜辺に着き、あの男は威風堂々と歩み寄ってきた。
私ははやる気持ちを抑えきれず、長い刀の鞘を投げ捨てた。

「待ちかねたぞ、武蔵。いざ、尋常に勝負」
その他
公開:26/02/26 21:20

加賀美 秋彦

加賀美 秋彦と申します。
2025年4月から、ショートショートを書き始めました。
色々なジャンルの作品を書いています。
よろしくお願いします。
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