しらないくらし

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今夜も終電帰りだが気分は軽い。なぜなら半年待ってようやく正反対の暮らしを疑似体験できるアプリ『しらないくらし』を手に入れることができたからだ。
駅から走ってアパートに帰り、宅配ボックスから箱を取り出した。立派な箱に入っていたマイクロチップ一枚をスマートフォンにセットする。初期設定に手間取ったが、画面に現れたおれのセレブな暮らしぶりを見たら、一気に疲れが吹き飛んだ。
現在深夜二時。壁の薄い安アパートの一室で隣の住人のイビキをBGMにして寝ているおれとは違い、画面のなかにいるおれは豪華な調度品に囲まれ、アロマの香りで安らかな眠りに包まれている。実にうらやましい。
朝昼晩と覗くのが日課になったが、視線を感じて見上げると、天井の隅に小型カメラが設置してあった。手を振ると、セレブなおれに振り返された。向こうのおれも、正反対な暮らしに憧れているようだった。
ファンタジー
公開:26/02/26 11:01
更新:26/02/26 12:50

いちいおと

☆やコメントありがとうございます✨

作品のイラストはibisPaintやAIで作成しています。

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