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急な坂道を登っていたら、後ろから来た中年の男が横に並んだ。彼は長年の友人に語りかけるような口調で、おれに声をかけてきた。
「あと少しで頂上だと思ったところが危険だ。あなたはそこで小石につまずき、よろめいて手をついた途端に、なぜか両足を骨折する。気をつけろよ」
おれは笑って応じた。
「まさか。こう見えて山登り歴二十年ですよ。体も丈夫でめったに風邪もひきませんし」
「その『まさか』が起きるのが人生なんだよ。禍福は糾える縄の如しと言うが、助言を転ばぬ先の杖だと思って、足元はよく見ておくことだ。リハビリに五年も費やしたくなかったらな」
「はいはい、わかりました」
男が下山すると言うので、おれはひとりで山の頂上を目指した。
驚いたことに本当に小石でつまづいたが、持っていた杖のおかげで体勢を崩さずに済んだ。
あれから二十年。まさかタイムリープが日常になるとは。今度はおれが過去のおれを救いに行く番だ。
その他
公開:26/02/25 10:14

いちいおと

☆やコメントありがとうございます✨

作品のイラストはibisPaintやAIで作成しています。

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