ふやける具

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 駅の立ち食いそば屋で、いつもは山菜そばを注文するが、今朝は気まぐれに、札束うどんを頼んだ。「へい、お待ち」目の前に出されたそれは、素うどんの上に札束が無造作にトッピングされていた。札束はつゆを吸ってふやけていた。つゆを飲み、うどんをすする。そして、札束を箸でつまみ、端をかじる。不味い。やはり、俺は、金なんか嫌いだ。うどんを全部食い、つゆを全部飲み、札束だけを残して店を去った。店の親爺は複雑そうな顔をしていた。夕方、会社の帰りにその駅を再び訪れた。何気なく立ち食いそば屋を覗くと、親爺が、今朝俺が食い残した札束の紙幣を、ドライヤーで乾かしていた。
その他
公開:26/02/21 09:50

六井象

短い読み物を書いています。その他の短編→ https://tomokotomariko.hatenablog.com/

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