なんでもない一日

0
1

孤独な科学者の男は、長年の試行錯誤の末、一つの機械を完成させた。
それは、機械でできた女性だった。

男は彼女の起動スイッチを押した。

彼女は目を開け、体を起こすと、男に言った。
「おはようございます。あなたがご主人様ですね。なんなりとご用事をお申し付けください」

「用事はないんだ。ただ、私の話相手になってくれればいい」

「話ですね。承知致しました。ご主人様はどんな話がお好みですか?」

「なんでもいいよ。つまらない天気の話でもかまわない」

「承知致しました。今日は良い天気ですね」

「大雨だよ」

二人は笑い合った。
男にとって、それは思い出せないほど久しぶりの笑いだった。

地下の研究室には、男と彼女だけがいた。
地上には誰もおらず、通信はずっと途絶えたままだった。

男は、ただ誰かと話がしたかった。
それだけで彼女を作った。

そうして、『なんでもない一日』が過ぎていった。
SF
公開:26/02/20 00:18
更新:26/02/20 01:52

加賀美 秋彦

加賀美 秋彦と申します。
2025年4月から、ショートショートを書き始めました。
色々なジャンルの作品を書いています。
よろしくお願いします。
note

https://note.com/a_kagami

X(Twitter)

https://x.com/kagami_short2?s=21

コメントはありません

コメント投稿フォーム

違反報告連絡フォーム


お名前

違反の内容