花が咲いたら

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一軒の家の庭先に、パンジーが咲いている。線路に一番近いその家には今年100歳になるおばあちゃんが住んでいて、花はおばあちゃん自らホームセンターで選び、プランターに植えたものだった。
おばあちゃんは夕方になるとプランターの横に置いた椅子に座り、小学校から帰途に着くこどもたちを出迎えた。
「おかえりなさい。今日もお勉強楽しかった?」と声をかけ、「楽しかった!」や「つまんないよ!」という答えをにこにこしながら聞いていた。そこを通るこどもたちにとっては当たり前の光景――だったが、ある日を境に、おばあちゃんの姿を見かけなくなった。
心配したこどもたちは、家の呼び鈴を押して、家族から話を聞いた。
「おばあちゃんは、施設に入ったんだよ。自分の足で歩けなくなってしまったからね」
「いつ帰ってきますか?」
本当はもう亡くなっているが、真実は言えなかった。
「そうだね⋯⋯もっとたくさん花が咲いたらかなぁ」
その他
公開:26/02/22 09:20

いちいおと

☆やコメントありがとうございます✨

作品のイラストはibisPaintやAIで作成しています。

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