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朧な存在であった私が形を持ち、夜明けの空を美しいと感じるようになったのはいつ頃だったか。

黒い山の麓でぼんやり目覚めた私は、見上げた頂の眩しさに目を細めた。
光を求め、幾日も鬱蒼とした草木を分け入って漸く辿り着いた頂に、私は庵を結ぶ事とした。
荒れた草木を手入れして、暫くは羊の様に群れを成す雲海と柳の如く頬を撫でる風を友としたが、ある朝山肌が熱を持っている事に気付いた。

この熱を知っている、これは私そのものだ。

その日から私は黒に覆われた熱い山肌を槌で打ってまわった。
月日を重ねるごとに龍の鱗の如き硬さと艷やかな墨色の輝きを増していく山肌。美しい先反りの刀の様な稜線。私の山を見る者は、誰もがそこに信頼を定めた。

人の信念は眉に宿り、研ぎ澄まされた信念はやがて刀鍛冶へと姿を変え、眉を打ち、どんな困難をも貫く龍刀へと鍛えあげる。

いつまでも漆黒の龍の如き眉あれば、そこに必ず名匠あり。
公開:26/02/17 22:00
更新:26/02/17 22:51
竜頭蛇尾

ネモフィラの旅人( 風の向くまま )

旅人なのでいたりいなかったりします

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