雪が降る

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 ある冬の日の夜、ニュースの天気予報で気象予報士が、
「明日は雪が降るでしょう」
 と言った。
「雪だってー」
 と息子が言った。
「本物の雪かなー」
 と訊いてくるので、
「どうだろうね」
 と答えながら、俺も内心楽しみにしていた。
 翌朝息子といっしょにわくわくしながらカーテンを開けると、外は一面真っ黒だった。
 今回も、降ったのは本物の雪ではなく、「雪」という文字だった。
 息子は、
「あー。こっちの雪かー」
 と言いながら庭に出た。靴がインクで汚れた。そして、
「この「雪」の字きれいだよー」
 と言って一つの「雪」の字をつまみ上げた。
 明らかに無理をしていた。俺は悲しくなった。
「手が汚れるからやめなさい」
 俺が言うと息子は、
「雪はきれいだもん」
 と言った。
ファンタジー
公開:26/02/19 08:33

六井象

短い読み物を書いています。その他の短編→ https://tomokotomariko.hatenablog.com/

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