勇者の証

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その紙は、
誰にでも配られているわけではない。
見ない者、
持たない者、
必要としなくなった者だけが辿り着く。

最初の関門は、
声に出会えないことだった。
番号を押し、待ち、
午前が終わり、夕方になる。
誰とも話さないまま、
一日が削れていく。

やっと声が出る。
「本当にありませんか」
「今後も予定は」
質問は確認ではなく、疑いだ。

次の声は少し柔らかい。
世間話の形をした罠。
多くはここで折れる。

私は短く答えた。
見ない。不要。それだけ。

数日後、制度の封筒が届く。
一枚の紙。勇者の証。
署名し、返送する。

達成感はない。
拍手もない。
ただ部屋の音が減った。

若い頃なら、
くじけぬ心と呼んだだろう。
今は違う。
これは戦いではない。通過儀礼だ。

制度は倒れない。
人が、先に年を取る。
ファンタジー
公開:26/02/12 19:00

問い屋

その違和感を、
まだ持ったままの人へ。
問いの続きを、ここにまとめています。

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