巣立ち
2
2
家電量販店の屋上の隅に、野生の扇風機が巣を作った。巣の中では、赤ちゃん扇風機たちが小さな羽根を一所懸命回している。オスの扇風機は首を振って巣の周りを監視している。メスの扇風機は微風を赤ちゃん扇風機たちに送っている。そこへ、本物の風が吹いてくる。赤ちゃん扇風機たちは親の扇風機に、巣から連れ出され、その天然の風を浴びる。赤ちゃん扇風機たちにはそれが何よりの栄養だ。天然の風を浴び、親の扇風機の愛情を受け、赤ちゃん扇風機たちはすくすくと成長する。やがて巣立ちの季節が訪れる。初夏だ。赤ちゃん扇風機たちはすっかり大きくなり、立派な扇風機になっている。扇風機たちは親に別れを告げ、屋上を降り、家電量販店の店内に入っていき、扇風機売り場に自ら並ぶ。工場で作られた扇風機たちが強風で威嚇してくる厳しい世界で、彼らは無事生き残れるだろうか。店員たちが不安そうに微笑んでいる。
公開:26/02/14 11:48
短い読み物を書いています。その他の短編→ https://tomokotomariko.hatenablog.com/
ログインするとコメントを投稿できます
六井象