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止める男がいた。
彼は何でも止めた。
「前例がありません」
新しい案は凍り、
企画書は眠った。

ある日、AIが導入された。
男の議事録と否決理由を、
すべて学習させた。

決裁は速くなった。
承認は数秒で下りる。
男は異動になった。

会議は軽くなった。
反論は減り、
事故も減った。
評価も上がった。
失敗も、なくなった。
会議は早く終わり、
皆が定時で帰るようになった。

数ヶ月後。
ある企画が却下された。
理由は三行。
「前例がありません」
「想定外のリスクがあります」
「企業価値を毀損する可能性があります」

男より、丁寧だった。

その日から、
AIの却下率は
男より高くなった。

却下された企画書を、
誰も持ち帰らない。
机は整い、
責任の所在も整った。

決裁は自動だ。

止めているのはAIか。
それとも、

止められることで
ほっとしている
私たちか。
その他
公開:26/02/14 19:00

問い屋

その違和感を、
まだ持ったままの人へ。
問いの続きを、ここにまとめています。

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