⑥ 羅針盤

0
1

地図の端は白く、
海はそこから始まっていた。

磁石の針が、
北を求めて震える。

船は出る。
水平線は後ろへ退く。

戻った者は、
金と香辛料と、
見知らぬ肌の色を語った。

港に灯が増える。
倉は熱を持つ。

やがて針は、
金の匂いを覚える。

海は道になり、
人は縄で束ねられ、
汗と息が同じ波に溶ける。

帆は止まらない。
止まる理由が、
地図のどこにもない。

針は前を指す。
折れない。

ただ、
帰る方角だけが、
白く抜け落ちている。
その他
公開:26/04/25 19:00
更新:26/02/12 05:52
#歴史断面

問い屋

問いを描くショートショートを書いています。
 
その違和感を、
まだ持ったままの人へ。
 
問いの続きを、ここにまとめています。

コメントはありません

コメント投稿フォーム

違反報告連絡フォーム


お名前

違反の内容