① 火

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洞窟の奥で、群れは震えていた。
闇は息をし、獣の気配が近づく。

誰かが落雷の燃えさしを拾い、
両手で囲った。

火は夜を退け、
肉を柔らかくし、
闇を遠ざけた。

ゲシェル・ベノト・ヤアコブの炉跡のように、
炎は守られ続けた。

やがて番をする者が生まれる。
眠らず、赤い芯を見つめる役目。
瞼の裏まで、橙が焼きつく。

火は消えなくなった。
その瞬間、
役目も消えなくなった。

守る者は半歩だけ外れ、
炎とともに立ち尽くす。

消せば闇に戻る。
守れば、群れの形が変わる。
その他
公開:26/03/21 19:00
更新:26/02/12 05:47
#歴史断面

問い屋

問いを描くショートショートを書いています。
 
その違和感を、
まだ持ったままの人へ。
 
問いの続きを、ここにまとめています。

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