「殺さないで」から始まる十二支考 還暦

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「殺さないで」
から始まる十干十二支をへ巡る回廊に、僕たちは囚われていた。それは始点と終点とを縫い合わされた永遠の巡礼だ。僕たちは春を産まれて夏を生き秋を愛でて冬を眠る。それは放っておいても回り続ける巨大な観覧車だった。観覧車の中に観覧車が回り、観覧車の隣に観覧車が噛み合う。機械仕掛けの時計のような命の回廊が「時間」で測られることも、それが「循環」することも、そう考えれば当然なのだった。命は失われることはなく、ただゴンドラに乗り込んでいるものの姿が変わっていくだけなのだから。
「殺さないで」
という願いは聞き入れられず僕たちは、真冬の観覧車の底辺から放り出される。けれどゴンドラが空っぽになることはなく、そこに産まれた春の息吹は、そこはかとない温もりと湿り気と匂いに鼻をひくひくさせ、ゆっくりと上昇する重力にみずからの身体を感じ、世界を踏みしめる。
その瞬間、新たな
「殺さないで」が始まる。
ファンタジー
公開:26/02/08 09:12

新出既出

星新一さんのようにかっちりと書く素養に乏しく、
川端康成さんの「掌の小説」のように書ければと思うので、
ショートショートとはズレているのかもしれないです。
オチ、どんでん返し、胸のすく結末。はありません。
400文字、おつきあいいただければ幸いです。

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