気持ち多め

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昼の客は、
言い方が決まっている。

「大盛りじゃなくて、
気持ち多めで」

中年の男が、
申し訳なさそうに言う。
だが、断られない前提の
声をしている。

若い頃は、
その言い方が嫌いだった。
量は量だ。
気持ちは秤に乗らない。

今は、
少しだけ分かる。
腹が減っているのではない。
足りないのは、
量じゃない。

お玉を一度止め、
ほんの少しだけ、
戻さずに流す。

男は黙って頷く。
それで済む。

規定は変えていない。
損も得もない。

気持ち多めとは、
追加の米ではなく、
否定されなかった
という事実だ。

そのうち、
言わなくなる。
頼む側の気力が、
先に減る。

今日はまだ、
言われている。
その他
公開:26/02/25 07:00
更新:26/02/09 08:46

問い屋

その違和感を、
まだ持ったままの人へ。
問いの続きを、ここにまとめています。

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