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「殺さないで」
という言葉を、僕はぐっと呑み込んだ。言っても無駄だ。サルに言葉は通じない。言葉が通じないサルにむかって「殺さないで」と懇願すれば、僕は大きな何かを失うことになるような気がした。それは、考えられる限りもっとも野蛮な方法でまもなく奪われる命よりも、大きな何かだという気がする。
サルの身体能力は人間を凌駕する。人間は、たとえばナイフを持っていたとしてもサルには勝てないだろうし、銃があっても命中させることができるかどうか怪しいものだ。だから、人間がこの世界に君臨してこられた理由は、サルが、こちら側の世界に関心を持たなかったからにすぎない。サルにはサルに必要なだけの知性と欲望が備わっていて、その世界観の中で暮らしていた。
だが、サルの中で何かが弾け、「世界」を外から眺める視点がもたらされると一斉蜂起して人間狩りを始めたのだ。
「早く殺せ」
という言葉を僕はぐっと呑み込んだ。
という言葉を、僕はぐっと呑み込んだ。言っても無駄だ。サルに言葉は通じない。言葉が通じないサルにむかって「殺さないで」と懇願すれば、僕は大きな何かを失うことになるような気がした。それは、考えられる限りもっとも野蛮な方法でまもなく奪われる命よりも、大きな何かだという気がする。
サルの身体能力は人間を凌駕する。人間は、たとえばナイフを持っていたとしてもサルには勝てないだろうし、銃があっても命中させることができるかどうか怪しいものだ。だから、人間がこの世界に君臨してこられた理由は、サルが、こちら側の世界に関心を持たなかったからにすぎない。サルにはサルに必要なだけの知性と欲望が備わっていて、その世界観の中で暮らしていた。
だが、サルの中で何かが弾け、「世界」を外から眺める視点がもたらされると一斉蜂起して人間狩りを始めたのだ。
「早く殺せ」
という言葉を僕はぐっと呑み込んだ。
ファンタジー
公開:26/02/06 22:20
星新一さんのようにかっちりと書く素養に乏しく、
川端康成さんの「掌の小説」のように書ければと思うので、
ショートショートとはズレているのかもしれないです。
オチ、どんでん返し、胸のすく結末。はありません。
400文字、おつきあいいただければ幸いです。
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