オトムシリ

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「ここで動画を撮ると必ずザザ…とか音が入るらしくて。もしや、と」

不動産屋は「決まってもすぐ退居されちゃうんですよ、この部屋」と白い溜め息をついた。

「当たりみたいです」

私はモニターを指差した。

「これは…!お願いできますか?」

横からモニターを覗き込み、不動産屋が震えながら言った。サーモグラフィーカメラで映し出された部屋は真っ青に染まり、ギザギザと揺れている。

「勿論」

私は音むしり用軍手をはめた。
部屋中に蔓延る雑音を抜く為に。

雑音は繁華街等で衣類に付着した音の種が不安を感じると発音する。氷柱の様に冷たく鋭いのが特徴だ。つまり、雑音の育った部屋は異様に寒く、特定の条件下で異音が聞こえたり影が映り込んだりするから、放置しておくと心霊現象と間違われてしまう場合が多い。

私はモニターを必要としない。
感覚が頼りだ。
目を閉じ耳を澄ませて、私は一音目の音元を迷わず掴んだ。
公開:26/02/06 15:10
更新:26/02/06 15:21
雑草 雑音

ネモフィラの旅人( 風の向くまま )

旅人なのでいたりいなかったりします

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