「殺さないで」から始まる十二支考 未年

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「殺さないで」
 また平凡で、無駄な懇願。
「殺さないでっ、と」(パァン)
 まあ、ただ黙っている相手より、何か言ってくる相手の方が新鮮味があって楽しい。
「子供、子供だけは」
「はい。助けません」(パァン)
 時間と体力が許せば、殺すプロセスを楽しむことができるのだが、殺処分の期日が迫っている。
「地獄に落ちろ」
「ここがそうです」(パァン)
 毎日八時間。立ちっぱなしで殺している。先月までは、ひたすら羊の毛を刈っていたというのに。
「逃がしてくれたら」
「僕がヤバいです」(パァン)
 とにかく単純な反復作業というのは退屈で、いろいろなことを思い出したり、しょうもない計算をし続けたりしてしまう。
「変わってくれないか?」
「ん?」
 この申し入れは、僕のルーティンを軋ませた。
「変わるって、君に僕を殺させろってことか?」
「違うよ。俺があんたの毛を刈るんだ」
「ナイス・トライ」(パァン)
ファンタジー
公開:26/02/05 20:47
更新:26/02/05 21:22

新出既出

星新一さんのようにかっちりと書く素養に乏しく、
川端康成さんの「掌の小説」のように書ければと思うので、
ショートショートとはズレているのかもしれないです。
オチ、どんでん返し、胸のすく結末。はありません。
400文字、おつきあいいただければ幸いです。

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