「殺さないで」から始まる十二支考 戌年

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「殺さないで」
と彼が言うと、犬は腹を上に向けて寝転がり、首をねじまげて彼を見上げた。
「やっと覚えさせたよ。お手とかより、だいぶ苦労したよ」
 僕は、テレビとかの、指鉄砲で「バアン」とやると、コテンと死んだふりをするペットをおもしろがる連中のことを思い出していた。
「こういう動作って、意味が分かっててやってるのだろうか?」
「意味? こいつらに意味なんて分かってるわけないさ。やらなきゃ餌がもらえない。叩かれたくない。愛されたい。で、必死で求められた動きを再現してみせてるだけさ。本当に殺されそうになったとき、自主的に『殺さないで』ポーズがとれるとは思わないね」
 僕は腹が立った。
「じゃ、本当に殺されそうになったら、犬はどうするだろう」
「さあね。犬の神でも呼ぶんじゃねえの?『助けて』ってね」
 その時、犬は前足を組むような動きをした。すると次の瞬間、僕の目の前で、彼がぺしゃんこに潰れた。
ファンタジー
公開:26/02/07 15:25

新出既出

星新一さんのようにかっちりと書く素養に乏しく、
川端康成さんの「掌の小説」のように書ければと思うので、
ショートショートとはズレているのかもしれないです。
オチ、どんでん返し、胸のすく結末。はありません。
400文字、おつきあいいただければ幸いです。

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