かちかち山の話(分業責任)

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昔、争いが起きた。
原因は兎と狸の間にあったと整理されている。
被害は重大で、詳細は残っていない。

報復が決定され、役割が割り振られた。
誘導、準備、実行。
すべて一人では行われていない。

兎は知恵を出し、
火を用意し、舟を作らせ、順序を整えた。
直接、手は下していない。

火は燃えた。
乾いた音がしたとだけ、補足されている。

舟は沈んだ。
狸は死んだと記録された。
だが、誰が殺したのかは書かれていない。

後に検証が行われた。
火をつけた者はいない。
沈めた者もいない。
全員が「自分の工程は正しかった」と述べた。

一人だけ、何も言わなかった者がいたが、
記録には空白として残された。

処罰対象は設定されなかった。
作戦は成功し、被害は止まったからだ。

物語では兎が仇を討ったことになっている。
理解しやすいためだ。

だが責任は、分けた瞬間に、
誰のものでもなくなっている。
ファンタジー
公開:26/02/24 07:00
更新:26/02/03 08:51

問い屋

問いを描くショートショートを書いています。
 
その違和感を、
まだ持ったままの人へ。
 
問いの続きを、ここにまとめています。

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