笠地蔵の話(未記録)

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昔、笠を売る老人がいた。
売れなかった、と記録にはある。
理由は残っていない。

帰り道、地蔵が並んでいた。
雪が積もっていた。
老人は笠を被せた。
数が足りず、自分の手拭いも使った。

その行為は、誰にも見られていない。
記録もない。
申請も、承認もなかった。

夜、家に物が届いた。
米、薪、布。
生活に困らない程度のものだった。
送り主は不明。
帳簿には「発生源不詳」とだけ残った。

翌年、同じ場所を調べた者がいた。
再現はされなかった。
雪の量も、時間も、動機も揃わなかった。

結論として、
因果関係は確認できなかった。
善行は立証されず、
報酬は偶然と処理された。

今も人は言う。
「見返りを求めない行為は美しい」と。
だが、それは
記録されなかったものにだけ許される。
ファンタジー
公開:26/02/12 07:00

問い屋

その違和感を、
まだ持ったままの人へ。
問いの続きを、ここにまとめています。

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