思い出の写真

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ある昼彼は風変わりなカメラを買った。数日後に結婚を控えた彼は、彼女とこれから歩む長い人生の断片をこの一台のカメラで残していこうと思ったのだ。異変にはすぐ気が付いた。帰り道に試し撮りと称して買ったスタバのカフェモカ、写真から同じ匂いがしたのだ。匂いだけでない。カップのツルツルした手触り、店内のしゃれた音楽と周りの話声、さらにはその時の彼の感情まで、その一瞬が切り取られていた。彼は驚き動揺した後喜んだ。彼は彼女との間に生まれる感動や愛情、悲しさをいつか忘れてしまうことを恐れていた。
 それから彼は事あるごとにそのカメラで写真を撮っていった。写真を何百何千とプリントしファイルに収め、時折それを取り出してはその感情の残っているに狂喜した。
 気づけば最初の写真から三十年以上経っていた。彼は随分と老いた。写真は日に焼け色褪せた。匂いはかつてのままだろうか?感情は?
そんなこと、彼には今更な話だった。
ファンタジー
公開:26/01/31 19:57
更新:26/01/31 20:05

てっど

ぜひ仲良くしてください。 
高校生です。ジャンルは純文学、詩、SFが多いと思います。
物書き自体を最近始めたばかりなので、いろいろ教えていただけると嬉しいです。
 

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