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「殺さないで」
とウシに言われ、僕は困ってしまう。
「すみません。僕はただ立ち寄っただけなので、そういうことを決められる立場ではないんです」
これは嘘ではなかったけれど、本当は、生死を決めることができる立場なんてないと思っていた。
ウシはもごもごと口をうごかした。青草にとろりと涎が垂れた。牧場を爽やかな風が吹き抜けていった。
「世界は、美しいよね」
とウシは言った。
「本当にね」
と答えた僕は、もう泣きそうだった。
「牛乳が好きかい?」
「うん」
「ステーキは?」
「好きだよ」
とても小さな、声にならない声で、僕はウシと言葉を交わしていた。
「ここにはヤギもヒツジもブタもアヒルもニワトリもイヌもいるんだ」
そう言うと、ウシは首を激しく上下に振った。その鼻先から銀蠅が逃げていった。
「悪いね。蠅がうるさくて」
「うん。ごめんね」
それだけ言って、僕もウシの前から逃げていった。
とウシに言われ、僕は困ってしまう。
「すみません。僕はただ立ち寄っただけなので、そういうことを決められる立場ではないんです」
これは嘘ではなかったけれど、本当は、生死を決めることができる立場なんてないと思っていた。
ウシはもごもごと口をうごかした。青草にとろりと涎が垂れた。牧場を爽やかな風が吹き抜けていった。
「世界は、美しいよね」
とウシは言った。
「本当にね」
と答えた僕は、もう泣きそうだった。
「牛乳が好きかい?」
「うん」
「ステーキは?」
「好きだよ」
とても小さな、声にならない声で、僕はウシと言葉を交わしていた。
「ここにはヤギもヒツジもブタもアヒルもニワトリもイヌもいるんだ」
そう言うと、ウシは首を激しく上下に振った。その鼻先から銀蠅が逃げていった。
「悪いね。蠅がうるさくて」
「うん。ごめんね」
それだけ言って、僕もウシの前から逃げていった。
ファンタジー
公開:26/01/31 09:39
更新:26/01/31 09:41
更新:26/01/31 09:41
星新一さんのようにかっちりと書く素養に乏しく、
川端康成さんの「掌の小説」のように書ければと思うので、
ショートショートとはズレているのかもしれないです。
オチ、どんでん返し、胸のすく結末。はありません。
400文字、おつきあいいただければ幸いです。
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