会稀月色-かいきげっしょく

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どうせ自分の差し金だと、私が気付かぬと思っている。

表で笑い騒ぐ声に耳をふさぐ。ひねくれた性分は昔からだが、澄ました顔で他人を巻き込み罠を張る辺り、まったくお前は可愛げがない。
そう易々と出てやるものか。ふんと鼻を鳴らした拍子、岩戸の内で稲光が巻いた。

私には弟が二人いるが、ことに離れて暮らす上の弟は面倒くさい男だ。
何を投げても『姉上の良い様に』と従順に返す、穏やかな微笑の裏で何を考えているのか。乱暴で甘ったれな末弟の方がよほど単純で転がしやすい。

分かりやすい末弟の、度の過ぎた甘えに愛想を尽かし、大げんかの末に岩戸を閉じた私を、上の弟が企てにかけて引っ張り出そうとした。
やむなく岩戸を出た後、頭にきて怒鳴り込んだ夜の宮で、奴は腰を抜かさんばかりに驚いていた。
「天照……!?」

――ふん、お前も案外と可愛げがあるじゃないか。
夜目にも真っ赤に染まる月面に、不覚にも笑ってしまった。
公開:26/02/02 16:59

創樹( 富山 )

創樹(もとき)と申します。
葬祭系の生花事業部に勤務の傍ら、物書きもどきをしております。
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ベリーショートショートマガジン『ベリショーズ』
Light・Vol.6~Vol.14執筆&編集
他、note/monogatary/小説家になろう など投稿サイトに出没。

【直近の受賞歴】
第一回小鳥書房文学賞入賞 2022年6月作品集出版
愛媛新聞超ショートショートコンテスト2022 特別賞
第二回ひなた短編文学賞 双葉町長賞

いつも本当にありがとうございます!

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