回帰日蝕-かいきにっしょく

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この件が僕の差し金だと、君は考えもしないだろう。鏡に反射する光に企ての顛末を見届けて思う。

僕には離れて暮らす姉がいる。互いの職務上必然なのだが、年々彼女の中から僕の存在が薄れていくのが、内心無性に淋しかった。僕にとって、彼女の輝きは世界の全てに等しいのだから。
僕にはもう一人弟がいるが、これが乱暴で甘ったれで、姉の気を引くために狼藉を働く男だった。
迷惑をかけてまで顧みられたくないが、やはり胸がふさいだ。繰り返し叱りながらも弟に情を恵む彼女は、僕に何を与えてくれただろう。

君に笑ってほしかったんだ。
弟との大げんかの末、岩戸へ引きこもった太陽が、ついに姿を現した。
それが僕の為でなくても、笑っていてほしいんだ。
月の鏡を閉じ、昼を取り戻した地上に背を向ける。

ほの暗い夜の宮の扉を開くと、真昼の様な光が満ちた。
「月読」
懐かしい顔が僕を見て笑う。地上は再び、束の間の夜に沈んでいた。
青春
公開:26/02/02 16:58
月の文学館 テーマ:ときめき

創樹( 富山 )

創樹(もとき)と申します。
葬祭系の生花事業部に勤務の傍ら、物書きもどきをしております。
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ベリーショートショートマガジン『ベリショーズ』
Light・Vol.6~Vol.14執筆&編集
他、note/monogatary/小説家になろう など投稿サイトに出没。

【直近の受賞歴】
第一回小鳥書房文学賞入賞 2022年6月作品集出版
愛媛新聞超ショートショートコンテスト2022 特別賞
第二回ひなた短編文学賞 双葉町長賞

いつも本当にありがとうございます!

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