4
2

狭い庭は数々の古き品で溢れていた。
馬車の車輪、鍬、ミルク缶、バターチャーン、荷運び用の手押し車――どれも私が蚤の市で手に入れたもの。ヨーロッパのどこかで使われていたと聞くと、どうしても手に入れずにはいられないのだ。
先日、遂に妻が家を出て行った。傷心の私が向かったのは、早朝駅前蚤の市である。傷を癒やすには、家のなかも古き品で埋め尽くすべきだという結論に至ったのである。
朝6時。通りすがりに立ち寄った風を装い参戦した。噂には聞いていたが、とんでもない賑わいである。宝の山に足を踏み入れたことは確かだが、とても見切れない。
露店で謎の赤いジュースを買い、ひと息入れていると、別の客がニヤニヤしながら声をかけてきた。
「お宅の住むところ、決まりました?」
「なんのことです?」
「だって、あなた⋯⋯ねぇ?」
近くに立てかけられたアンティークの鏡には、蚤が二匹映っていた。
ファンタジー
公開:26/07/25 16:01

いちいおと

☆やコメントありがとうございます✨

作品のイラストはibisPaintやAIで作成しています。

コメント投稿フォーム

違反報告連絡フォーム


お名前

違反の内容