高校野球

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夏の高校野球大会。無名校の四番打者は、打席に立つたび、誰にも聞こえない応援歌を耳にしていた。
その音色が響くと、不思議なことに球はゆっくりと見え、どんな速球も芯で捉えられた。
試合を重ねるごとに彼は大活躍し、観客は甲子園の奇跡と呼んだ。しかし勝ち進むほど応援歌は大きくなったが、ベンチにもスタンドにも歌う者はいないことに気づく。
決勝戦、九回二死満塁。彼が放った打球は大空へ消え、球場から一瞬だけ音が消えた。歓声が戻ると、打球はホームベースの上に静かに落ちていた。
審判は本塁打を宣告し、誰も不思議がらない。試合後、古びた優勝旗を見ると、百年前の写真に今と同じ笑顔の自分が立っていた。
驚いて目をこすると写真は元に戻り、応援歌も二度と聞こえなかった。
ただ、翌年の開会式、誰もいないアルプス席から、あの懐かしい旋律だけが風に乗って流れ、次の選手を静かに待っているようだった。
ファンタジー
公開:26/07/22 08:45

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