経験者名簿

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紙戻し課の保管庫には、経験者名簿がある。

厚い帳面で、開くと古い紙の匂いがした。

退席済。
異動済。
確認不可。
応答なし。

名の横には、細い印が残っている。

前任者。
確認者。
補充者。
空洞席。

タカシは眉をひそめた。

「いない者まで数えてるのか」

紙戻し騎士長は首を振った。

「いません。だから呼べます」

セウゴは帳面の端に、薄く自分の名を見つけた。
まだ黒ではない。
鉛筆で、仮、とだけ添えられている。

セウゴは指を引っ込めた。

「消せないのか」

そう聞く前に、保管庫の奥で呼出札が鳴った。

経験者照会中。

帳面の頁が勝手にめくれた。

昨日、確認不可になった空欄が、
名のないまま立ち上がる。

次の行に、赤い点が落ちた。

セウゴは指で押さえた。
紙は乾いていた。

夕方、名簿の端の仮が消えていた。

代わりに、小さく書かれていた。

照会済。
ファンタジー
公開:26/07/17 18:00
更新:26/07/10 13:29
#紙戻し課

問い屋

問いを描くショートショートを書いています。
 
その違和感を、
まだ持ったままの人へ。
 
問いの続きを、ここにまとめています。

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